才能があるということ
先日、とある知人の絵の個展に行ってきました。元々、20年以上前に教材出版社で社会科教材の編集をしていた時に、売り込みにいらした画家さんだったのです。
ところが不思議な縁で、私が出版社を辞めた後にその方も双子を出産し、昔さかんだった双子のメーリングリストで再会。その後、また一旦縁が切れかけていたのですが、何と子どもの中高が一緒で、私がPTA役員の名簿に載っていたことからあちらが私に気が付き再会という不思議なご縁の方なのです。
私がその昔依頼した大名行列であるとかの懐かしい絵もファイルの中にありました。その方は芸大の日本画科を出ていて、昔は絵が暗めだったのですが、今は突き抜けたようでとても明るいタッチの絵を描いています。
そこでの興味深い話が、彼女の芸大の日本画科での女性の同級生が半分以上離婚しているというもの。
何か聞いていて、わかるわーという話だなと。
何と言っても日本最高峰の芸術大学。日本画科の定員は現在は25人。たったの25人しか入れない。選ばれた才能溢れる人が入るところなわけです。しかし、逆に考えれば毎年25人も輩出される。この中で画家として成功する人は?きっと一人もいない年もあるのではないでしょうか。特に日本画家でやっていこうとすれば。
前記の彼女も今はアクリル絵の具で描いたものを多く展示していました。
芸大を出ていれば、みんな誰もが「すごい」と思うものです。私の同級生でも芸大美術学部に行った人は、他の誰とも違う絵で、すごい才能だなと思ったものです(しかし、大成はしていないらしい)。
芸術で食べるというのは、才能と運です。ゴッホだって死後に評価されたくらいですからね。
美術だけではなく音楽も然り。私の友人の親類に芸大のピアノ科を出た女性がいるのですが、プロのピアニストになるには、著名なコンクールで優勝する必要があります。しかし、その女性はいつも2位。2位だとソロのピアニストとして食べてはいけないのです。これが芸大ではなく他の音大出だったら、ピアノの先生をやったり、小さなコンサートで弾いたり、或いは伴奏の仕事だったりとピアノで食べていくこともそれなりに可能なのですが、芸大を出ていると、プライドもあり、そういう小さな仕事はできず、結局ピアニストを諦めるということにもなってしまうようです。
で、さっきの離婚が多い話。誰もが思う「芸大を出ている=才能がある」。本当は絵で認められたい。自分の才能を信じたい。しかし、プロとして食べてはいけない。そして、結婚して生活に追われる現実。悶々とするものがあるのではないでしょうか。
なまじっか才能があると、却って人生が辛くなるようにも思います。と、思っていた折、たまたま手に取った徳間書店の『読楽 3月号』。乙川優三郎さん目当てでもらってきたフリーの冊子。放置してあったのを読んでみると、
そのまさに乙川優三郎さんの短編読み切り『言葉さえ知っていたら』。これがまた美大出の男女の話なんです。中途半端な才能は時に残酷…。
自分の才能にどこで見切りをつけるか、何が自分にとって幸せなのか、自分の人生は常に自分で選択ですね。
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