『初夜』
イギリスのブッカー賞作家、イアン・マキューアン著(原題『On Chesil Beach』新潮クレスト・ブックス)日本語のタイトルが原題と違ってそのもの、というのがちょっと何ですが。
舞台は1962年。育ちも興味も違う二人が、出会い、交際の末に結婚。結婚式の後のビーチそばに立つホテルでの初夜とそこに至る過程を描いた小説。
ずっとその時を待っていた夫と、ずっとその時を恐れていた妻。そして初夜が失敗に終わる。あんなに好きだったのに、単なる間の悪さとか、思っていないことを口走ったたためだったりとか、で、二人の関係は取り返しがつかないほど悪くなってしまう。
話はそこに至るまでの展開を両者の気持ちから細密に描いています。
一度嫌いになると今まで隠していた感情や思いが出てきて、一気に嫌いになっていきがちですけど、本当に一夜の失敗だけで関係が終わるのは何とも切ないものです。
現代では、結婚前に関係を持たない割合はどのくらいなのかはわかりませんが、初夜がうまくいかずに離婚になるカップルは少ないのではないかと思います。結婚前に関係を持たないというのは、かなりの賭けでしょう。結婚して初めて性の傾向がわかるというのは、ちょっと怖いです。性はやはり秘め事であると同時に、夫婦をつなぐ大事なものですから。